第211回 Active Learning for Improving Students’ Self-Study Attitude and Ability 山本 崇雄(都立両国高等学校附属中学校)
前回に引き続き、内田洋行フューチャークラスルームでの開催になりました。発表者は山本崇雄先生です。「自学力」という言葉をキ―ワードに、教えすぎない指導、生徒同士が教え合う場面の実践例を提示していただきました。 1 Introduction-Think different 2 Who is your ideal student? 日々の授業の先にどのような生徒像を描きますか。3年後、6年後、10数年後…そのゴールの一例として、山本先生のライフワークでもある英語劇と、授業で行った中学2年生、高校2年生のオーラルプレゼンテーション(教科書のReproduction活動)の映像を見せていただきました。2つに共通することは、自分の考えや思いを表現すること。 “The time will come.” いつか来る、大事なことを伝えなければいけないその時のために。間違いを恐れないことはもちろん大切ですが、本当に伝えたいことをきちんと伝えるためには、正しい発音や文法を習得することも大事だということが生徒にも伝わっています。 3 Self-Study Attitude and Ability 生徒がわからないことを自分で解決する力、ゼロから何かを作り出す力をつけさせることを山本先生は大切にされています。それらの力をどのように育てるかをお話ししてくださいました。以下、その具体的な実践例です。 4 Dictionary 英語を学習する際になくてはならないツールが辞書です。辞書指導の第一歩に辞書を授業に持って来させることがありますが、山本先生は授業の中に必ず辞書を使う場面を設けます。また、生徒は辞書の調べた語に付箋を貼ります。付箋には何番目に調べた語かを示す番号が書いてあり、この1年生の3学期に付箋の数が2000枚以上に達した生徒もいます。生徒はこれまでの積み重ねが目で見てわかるので、どんどん未知語を調べるようになります。 また、辞書の引かせ方にもヒントをいただきました。例えばNew Crown 2 Lesson 5 の中に “sight”という語が出てきます。辞書で引くと「視覚」という意味が1番目に出てきますが、文章の中では “sight and sound”という風に使われているので、soundと対比すると「視覚」より「光景」という意味の方がふさわしいことがわかります。必ずしも最初に出てくる意味が合うわけではなく、場面にふさわしい訳語を選ぶ必要があるということも生徒に気付かせなければなりません。 5 Lesson Plan 以下は山本先生が普段教えている中学2年生の授業の構成です。 (1) Warm-up Bingo (2) Review-Oral Presentation (reproduction) (3) (Grammar) (4) Guess Work & Tell (6) Check of Understanding (7) New Words (8) Reading Aloud (3)以外は教科書を基にした活動です。生徒の出来ることは生徒にやらせる、ということで、Bingoも教師が語句を読み上げるのではなく、生徒が読んだり、ペアワークにすることもあるそうです。 (4)Guess Workは本文の導入にあたる部分ですが、本文を読むときのわくわく感を損なわないために、教科書の内容に触れないようにすることを心掛けているそうです。扉絵を提示し、生徒同士でどんな内容かを想像さるペアワークを行っています。 (5) Read & Tell 4~6人でグループを作ります。そのうちの一人が教室の壁に貼ってある本文の情報を書いた紙を読み、班員に読んだ内容を伝えます。メンバー全員が情報を読んで班員に伝えるという作業を通し、最後には絵を見てreproductionが出来るようになることを目指します。英文を読み、その内容を伝えるのは大変な作業ですが、生徒のレベルに合わせて英文の難易度を変えることで、どの学校でも実施可能です。
6 Homework self-study 宿題の一つとして、基礎英語の聴取およびその内容のまとめを課しています。生徒は自分が大切だと思うことを自分なりの方法でまとめています。
山本先生の授業は、生徒が自分でわからないことを解決する力を身に着けるための工夫が随所に見られました。その力は学校だけでなく、将来生徒が社会に出てからも必ず必要となる力です。生徒の力を信じ、「教えすぎない指導」をするという新しい視点を持たせて頂く貴重な機会となりました。 (丹伊田里香:都立両国高等学校附属中学校)