「一人で学ぶことができる生徒をどのように育てるか」 「教師が夢を抱くことの大切さ」 「人間教育とは何か」 心に響くことばに溢れる研究会でした。 杉本先生は、今から25年前に区(墨田区[1989年/1993年]と中央区[1999年])の海外派遣で代表生徒をアメリカやオートラリアに引率しました。今回はその貴重な映像の数々を見ることができました。中央区で引率した海外派遣の最終日のバスの映像には、生徒たちの充実感と新たな希望に満ち溢れている様子が映し出されていました。25年前の海外派遣引率きっかけに杉本先生が教師として描いた夢。それは、 「生徒全員を海外に連れて行き、ホームステイをさせること」 そして両国附属中学校でその夢を昨年叶えることになります。学年全員での海外ホームステイが実現したのです。場所はアメリカ、ユタ州。ブリガム・ヤング大学での研修を中心としたプログラムです。両国附属中学校の3年生がホームステイを終えて現地空港にいる様子も映し出されました。25年前のバスの映像の生徒たちと同様に充実感と自信に満ち溢れている姿が附属中学校の生徒たちにもありました。杉本先生の描いた夢が線となりつながる瞬間でした。そして、講演の中盤。杉本先生が投げかけられた質問にはっとさせられました。「自分の仕事のどれくらいが英語に関係していますか?」
部活や分掌、行事などに多くの時間が取られます。みなさんはいかがでしょうか。杉本先生は「今でこそ、半分程度。」かつてはなんと「10%」と言われたのに驚きました。江戸川区の中学校では、学級通信が全国で評価され、区長から一人一人金メダルを授与される貴重な映像も映し出され、若き日の杉本先生も登場。言葉を大切にし、落ち着いた話し方は今と変わりません。杉本先生のお話を聞いていると、英語教師は、「英語だけを教えているのではない。」「教育とは人を育てること。」「学校教育の主たる目的は、人間教育。英語の授業はその一端。」というメッセージを私たちに送っているように感じました。教師が英語だけを教えていたら生徒の英語は知識のままで終わってしまい、生徒自身が英語を学ぶ意義を見出したり、自分の将来の夢を抱いたりすることは難しいのではと考えさせられました。 杉本先生と一緒に仕事をさせていただくことになって一年が経ちます。英語という教科の範囲に留まらず「到達目標」という言葉をよく聞きます。杉本先生は日頃から「どのような目標に向かって生徒を育てるか」「どのような生徒を育てるか」その到達目標を明確に指導されています。そのためか、指導の中で「教え込む」という雰囲気はあまり感じられません。もちろん基礎・基本を大切に、大事な部分は伝えていきますが、残りの部分は生徒の気づきを待っているように感じます。今回の実践報告の中3のディベート授業では、一見すると教師が指導すべき点はたくさんありますが、まずは、「生徒がディベートを体験して、失敗の中から自分自身で気づいていけば良い。」という姿勢で授業が進められていました。ディベートに向かっていくための細かい指導は3年間で段階的に行っていたと思いますが、その場であれこれ指導することはありません。これは、生徒自身が体験して気づくことが目標へ最も早く到達すること、そして生徒の成長を促すことを杉本先生が感じられて指導しているからではないでしょうか。このような指導を通じて、成長した生徒一人一人が「自分でできるという自信」を深め、さらに生徒の「自学自習」につながっていくことは言うまでもありません。 このように生徒の「学力」を保証する(今年度中学3年生英検2級合格者は学年全体の約35%)だけでなく、生徒の「成長」も促す杉本先生の指導に追いつけるようになるためには、私たちは「人間教育とはどうあるべきなのか」考えていく必要があります。 杉本先生が講演の中で「夢を見ていたからこそできたことがある。」と言った言葉が印象的でした。杉本先生は、海外研修を終えるときの生徒の姿や区長から金メダルを授与される生徒の姿を夢に描きながら指導を続けていたのはないでしょうか。私たちも同じように夢を描いていくことが、日々の授業改善にもつながること、また、その根底には教師は、教科だけを教えるのではなく、同時に生徒たちの人間的な成長・発達を実現させる手助けができる夢のある仕事に携わっていることを、杉本先生のお話を聞いて実感することができました。このようなすばらしい発表を直に聞くことができたことは今後の教員人生の中でも大きな宝となりました。この日のために多くの準備と、また、大変示唆に富む発表をしていただき、杉本先生、本当にありがとうございました。 (文責 両国高等学校附属中学校 鈴木悟)
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