第219回全英連東京大会の授業から

第219回布村先生の授業(高校2年生の授業) 平成26年1月11日 @都立両国高等学校附属中学校

<本日の授業について> 学年:都立両国高等学校2学年  教科名:英語Ⅱ 教材:CROWN English series  (三省堂) 単元:Lesson 7 in a Bottle 単元の目標 1)シードバンクの活動を理解し、生物多様性を保護する意義や環境問題について考える。 2)日本でのシードバンクの設立の是非について、グループで話し合うことができる。 3)根拠を示すなどの工夫をして、相手に効果的に伝わるように発表できる。 <本時の展開> 導入(5分) ○あいさつ ○本時の目標を知る ○日常会話練習 ・テーマの提示 “biodiversity” ・相槌の復習 “Really?”, “I see” など ・2分間、ペアで会話 ・生徒1人を指名。話したことを全体にシェア×2名 →シードバンクに関する教科書本文を読んだ上で実施。教科書本文の中から学んだ単語や表現を用いて会話している。 →中学校でも3年間授業のはじめにsmall talkを行ってきたことで、生徒も活動に慣れている。 会話練習は「話す練習」と「受ける練習」を同時に行う場。足りない部分や間違っている部分があれば、互いに補い合う。相手が補ってくれる、という安心感があるので、生徒はのびのびと会話することができる。 ○語彙確認(前時の復習) ・word flash×3回(徐々に速く) ・ワークシートを2人1組で解く(英語で書かれたある単語の定義から、その単語を類推する) ・生徒全員起立。先生が英語の定義を述べる。生徒は挙手し、単語や熟語を答える。 →生徒は予習をしてくる。教科書本文に関する英問英答をワークシートで答え、本文の語彙も調べてくる。 展開(15分) ○英問英答による内容確認(前時の復習) ・各列1人ずつ立たせ、生徒に質問する ・生徒は挙手して答え、正解した生徒は着席。1つ前に座っている生徒が立つ。 ・先生は正解した生徒の列にポイントをあげる →closed-ended questionsやopen-ended questionsを取り混ぜ、生徒の意見を問う質問も織り交ぜる。 ○音読活動(前時の復習) ・chorus reading (Lesson7 Secion4) (適宜生徒に個別に当てて読ませる) ・individual reading (パラグラフ×2回以上) ・2人1組で、音読した内容を要約し、相手に説明 →要約する活動があるので、生徒は音読している間も内容を頭に入れるため集中している。 ○プレゼンテーション(前時の復習) ・代表者が前へ出て、教科書の内容を英語で説明する。 聴衆とinteractionしながら、前時の内容を発表。 平易な英語で相手に伝えようとしているか、自分の意見や感想を述べられているか確認。 →プレゼンテーションは当番制。毎回誰かが前に出て話し、クラスメイトが質問を返す。生徒は、クラスメイトが話す内容に興味があるので、集中して聞く。 →プレゼンテーションをする生徒が話す英語は、生徒が望めば事前にチェックもする。 →中学校から教科書本文のreproductionを行い、さらに自分の意見を付け加える活動をしているので、生徒も慣れている。 展開(25分) ○グループでの話し合い(「新たなシードバンクを設立すべきか否か」) ・事前に準備をさせておく (テーマに対するaffirmativeかnegativeかの意見、その根拠やデータ。visual aid 1枚。) ・4人グループを組み、1人1人に役割を与える 「質問者」「意見発表者(affirmative)」「意見発表者(negative)」「ジャッジ(メモを取る)」 ・質問者は意見発表者2人から、それぞれの意見と情報を聞き出す。ジャッジはタスクシートにメモを取る。 ・ジャッジは不明確な部分を再度聞き直す ・ジャッジと質問者は、意見発表者の意見を比較し、どちらがより説得力があるかを話し合う。 ・意見発表者2名は互いの意見を比較し、どちらがより説得力があるかを話し合う。 ・グループで結論を出す。 ○発表 ・グループで出した結論に理由をつけて発表する(グループ全員で前へ) ・発表者はクラスに質問を投げかける ・聴衆は発表者に対して何か質問をする →コミュニケーションを成り立たせることを第一優先とし、英語の正確性はここでは評価しない (後日個々にプレゼンテーションを行い、評価する。今回発表者にならなかった生徒の調べ学習も無駄にしない) →同様に、論理的な破たんについても、個々のプレゼンテーションの前に指導し、全体の前では指摘しない。 →中学3年生や高校1年生でディベートの経験をしているので、生徒は自分の意見の後に、自然と根拠やデータを示す。   まとめ(5分) ○振り返りシートの記入(積極的にグループワークに関われたかどうか) ○Greeting(生徒の意欲や積極的な態度を誉める) 記録 小泉国広 品川区立鈴ヶ森中学校 <参加者の感想(一部を紹介させていただきます)> 1  昨日はありがとうございました。ちょうどCROWNを担当してますので、興味深く聞いておりました。 要点をまとめますと、 ・7時間の割り振りのうち、3時間をアウトプットに当てるというのは、なかなかできることではないです。一貫教育のよさが伝わってきました。 ・個人的には1時間目から4時間目までの授業の進め方も、是非見てみたいと思いました。 ・授業時間だけではなく、放課後などにもプレゼンテーションテストを実施するアイデアは参考になりました。 ・「文法用語は使わない」というテーマについて、以後取り上げてほしいテーマです。 実際、CROWNの本文の中には難易度の高い複雑な英文が出てくるので、中程度の高校では、思わずSVO…と分析を入れてしまいます。布村先生はどうされているのか詳しく聞いてみたいです。 2 一番印象に残ったのは、あえて細かいところは訂正せずに生徒が発表しやすい雰囲気を授業内につくるように配慮されていたところです。生徒の意見を引き出すにはどんな内容でも、ちょっとぐらい論理的にズレて発表してもいいんだと思わせることが必要だと気づきました。公開授業が終わった後、生徒たちが自省していたという話を聞いてその必要性を確信しました。また、ペアやグループワークをする理由の中に前向きな雰囲気の授業づくりがあったのはなるほどと思いました。一人だと発言しずらかったり、座れなかったりする子が出ることを予防している点が、生徒の感情の発達段階に沿っていると感じました。生徒の心を把握しながら授業の行える教師を目指していきたいと思います。 次に、生徒の興味は近い年齢の仲間に向かうので、プレゼンテーション等の自己表現は学び合うための絶好の機会だということです。確かに私の学校の生徒たちも自分のことや友人、家族のことなどの、身近な内容について楽しんで表現します。生徒の興味をどう引き出すか、ニーズをどう満たすのかが今後の私の課題です。最後に、英語で行う授業のモデルを勉強できました。特に、先生が一方的に話すのではなく、生徒たちの活動時間を十分に確保しながら、ファシリテーターとして英語で授業していたところが参考になりました。ただ単に英語で授業するのではなく、英語で説明や指示を出しつつ、生徒を学びへと導くプロセスが参考になりました。先導者としての能力の向上が教師には必要ということに気づかされました。 3 昨日の研究会に参加させていただき、自分の授業では本文を再話させる機会が少ないことを改めて実感しました。 また発音指導に関してですが、三年でフォニックスをやることはあるが、英語に慣れさせるのが先だというご意見、参考になりました。オーラルイントロダクションで新出文法を教える際、生徒が理解しているか心配で、ついつい余計に説明したくなるのですが、それは教員である自分が安心するからで、生徒にとって必要かは別問題だと気づかせていただきました。 音読の指導も、正確に発音できるまで繰り返し指導する、大切な箇所を焦点化するなど参考になりました。シャドーイングの様子も機会があれば見てみたいです。あとシャドーイングの指導は高校からなのか、あるいは中学でも行っているのか?…研究会の時は、特に気にならなかったのですが、家に帰ってから、シャドーイングの指導について、もっと具体的に知りたいと思いました…。 どんなに楽しい授業でも、生徒が家に帰って音読できなかったら、生徒は楽しいと感じない…というご意見も、本当に大切なことだと思いました。英語の授業はワイワイいろいろなアクティビティをしやすいですが、最終的には生徒がきちんと習得していなければ生徒のためにならないし、そのためにも必要なスキルを習得させるための地道な指導が大切なのだと実感しました。 私の授業は改善することが山ほどある状態ですが、研究会のおかげで課題を発見することができ、感謝申し上げます。

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